インフルエンザ・風邪シーズン突入 「抗菌薬が効く」間違ったイメージが3割 薬の誤認識が薬剤耐性菌の原因に!

今冬もインフルエンザや風邪が猛威を奮い始めたことを受け、AMR臨床リファレンスセンターでは、インフルエンザや風邪について20代~60代の男女318名にアンケートを実施しました。

その結果、インフルエンザ予防のワクチン接種にこれまで行ったことがない人が、約4分の1いることがわかりました。また、インフルエンザに効く薬について、20~30代の約半数は効く薬がわからない、約4分の1は抗菌薬(抗生物質)が効果があるという間違ったイメージを持っていました。インフルエンザに抗菌薬が効くという間違った認識は、薬剤耐性(AMR)の拡大につながる可能性があります。薬剤耐性菌から自分の身を守るためには、抗菌薬について正しい知識を持つことが大切です。また、インフルエンザや風邪を予防することも抗菌薬を正しく使うことにつながります。

感染症の大切な治療薬である抗菌薬が効かない薬剤耐性菌の問題が世界中で深刻化しています。インフルエンザや風邪などに不必要な抗菌薬を使用することは、薬剤耐性菌を増やす可能性があり注意が必要です。

どうしてインフルエンザや風邪に抗菌薬が効かないのか、そして私たちにできることについて国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター主任研究員の藤友結実子先生に聞きました。


【調査 SUMMARY<サマリー>】
・インフルエンザを経験したことがある人は8割、1割は今までに4回以上罹患
・4分の1がインフルエンザワクチン接種をしたことがない
・20~30代の4分の1はインフルエンザに抗菌薬が効くと誤ったイメージを持っている

・抗菌薬は風邪・インフルエンザには効きません
・風邪・インフルエンザで不必要に抗菌薬を使うと自分の身体に薬剤耐性菌を増やすことにつながる

〇サンプル:一般人 318名
男女 各50%
20代~60代年代別に調査
〇調査期間:2019年11月


■インフルエンザウイルスに抗菌薬(抗生物質)は効かない
インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因で起こる病気です。ウイルスをやっつけたいときに、抗菌薬を使っても全く効果がありません。抗菌薬はその名の通り「菌」をやっつける薬です。ウイルスも細菌も人に感染して病気を起こす小さな生物だと漠然と理解されていることが多いと思われますが、ウイルスと細菌は全く違います。

ウイルスが感染して起こるかぜやインフルエンザの時に、抗菌薬を服用しても、かぜもインフルエンザも治りません。それどころか、体にいきわたった抗菌薬は、副作用として下痢や腹痛を起こしたりします。インフルエンザで具合が悪いところに、効果のない抗菌薬を飲むことにより、副作用で苦しむかもしれないのです。

さらに、不必要な場合に抗菌薬を飲むことは、薬剤耐性菌を生み出したり増やしたりする環境を作ってしまいます。このようなことを繰り返していると、抗菌薬が必要な時に、実際に使えなくなってしまいます。

―ウイルスと細菌の違い―
細菌はウイルスの10倍から1000倍の大きさがあります。たとえば、ウイルスをアリとすると(種類にもよりますが)細菌は人間ほどの大きさになります。
また、細菌は自分でエネルギーやたんぱく質を作る構造をもち二分裂で増えますが、ウイルスはそのような構造を持たないため、他の生物の細胞の助けを借りることが必要です。


■1割がインフルエンザに4回以上罹患
インフルエンザにかかったことがあるのは20~30代が多い一方で、50代の3割、60代以上の約4割は1度もインフルエンザにかかったことがないと回答しました。また、5回以上かかったと回答した人は60歳以上ではいませんでした。
20~50代では、通勤、通学、学校や会社など人の集まる場所に行く機会が多く、そこでインフルエンザに感染すると考えられます。

また、高齢者が他の年代と比べて少ないのは、インフルエンザにかかっても典型的な症状が出にくいため診断されていない可能性があること、その場で診断できる検査キットが普及し始めたのが約20年前であるため、それより昔の感染は、はっきりしないことなどが考えられます。

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Q1、これまでにインフルエンザにかかったことはありますか?

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Q1、これまでにインフルエンザにかかったことはありますか?(年齢)


■インフルエンザのワクチンを毎年接種する人は3分の1程度
インフルエンザの感染予防対策の1つがワクチン接種です。
20~30代は毎年接種する人が45%を占めますが、40~50代では、毎年接種する人が20%前後でした。60歳以上では、毎年接種する人、ワクチン接種に行ったことがないと答えた人がそれぞれ38%を占め、世代により接種率にばらつきが見られました。

現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病や発病後の重症化、死亡を予防することに一定の効果があるとされています。また、ワクチンはそのシーズンに流行することが予測されるウイルスを用いて製造されます。そのため、毎年接種することをお勧めします。

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Q2、インフルエンザのワクチン接種にいきますか?

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Q2、インフルエンザのワクチン接種にいきますか?(年齢)


■20~30歳代の4分の1がインフルエンザに抗菌薬が効くと誤認
インフルエンザに抗菌薬が効くという間違った認識を持っている人は17%、わからないとの回答が34%でした。20~30代では間違った認識を持っている人が約4分の1を占めました。若い世代で間違った認識を持っているのは、薬についての知識を得る機会があまりないからと考えられます。インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因となる病気です。細菌をやっつける薬である抗菌薬を飲んでも効果がありません。

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Q3、インフルエンザに効果があるというイメージをお持ちの薬はどちらですか?

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Q3、インフルエンザに効果があるというイメージをお持ちの薬はどちらですか?(年齢)


■いちばん迷惑なのは咳やくしゃみを飛ばされること
他人に向かって咳やくしゃみをしたり、咳や鼻水が出るのにマスクをしないことを迷惑と考える人が多いのはうなづけます。手を洗わないことを迷惑と考える人は半分以下ですが、実は「手」はかぜやインフルエンザを広げる手段になります。鼻をかんだり、咳やくしゃみを手で覆ったり、ウイルスが含まれたしぶきがついた机や電車のつり革などを触ることにより、病原体は手を介して広がっていきます。かぜやインフルエンザにかからないためには、感染経路を断つこと、つまり手を洗うことが大切です。

手を洗うときには、汚れが付きやすく、また洗い残しやすいところを意識して洗いましょう。具体的には、指先やつめの間、親指、指の間、手首などです。帰宅時、食事前、調理時、トイレの後には石鹸をよく泡立てて洗い、水できれいに流しましょう。手荒れを起こすと、そこに汚れが残りやすくなるので、洗った手はしっかり水分を拭きとり、ハンドクリームなどで保湿することが理想的です。忘年会シーズンに、かぜをひいているのに宴会に参加して、そこで感染を広げるのも控えたいですね。

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Q4、風邪の人がしたら迷惑だと感じる行動を選んでください


■インフルエンザを予防することが、AMR菌対策につながる
〇薬剤耐性(AMR)とは?
細菌による感染症の治療に使われる抗菌薬が効かない、もしくは効きにくくなることを薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)と呼んでいます。

〇国連が「2050年にはAMRで年間1000万人が死亡する事態」と警告
国連は、このまま何も対策をとらなければ2050年までにはAMRによって年間1000万人が死亡する事態となり、がんによる死亡者数を超え、08~09年の金融危機に匹敵する破壊的ダメージを受ける恐れがあると警告しました。*1
抗菌薬の正しい認識を持つことが、薬剤耐性菌を増やす、生み出すことを防ぎます。抗菌薬を大切に使うという一人ひとりの認識が、将来子どもたちに襲いかかる脅威を防ぎます。

*1 https://news.un.org/en/story/2019/04/1037471
No Time to Wait:Securing the future from drug-resistant infections
Report to the Secretary-General of the United Nations April 2019

〇ワンヘルスという考え方
抗菌薬は、鶏、牛、豚など家畜や動物の感染症の治療や成長促進剤として日本を含め世界中で使用されています。
薬剤耐性の問題に取り組みヒトの健康を守るためには動物や環境にも目を配る必要があり、これらの衛生管理に関わる人々が分野を越え連携して取り組もうという考え方を 「ワンヘルス・アプローチ」 といいます。
現在、各地で ワンヘルス・アプローチによる薬剤耐性への取り組みが進められています。


【インフルエンザ・風邪予防は、AMR(薬剤耐性)菌感染予防】
1.インフルエンザのワクチン接種を毎年行う
ワクチン接種は重症化を防ぐだけでなく、集団での流行を防げる。毎年接種することが望ましい

2.インフルエンザ・風邪に抗菌薬は効かない、医師に処方を要求しない
インフルエンザには抗菌薬は効かないだけでなく薬剤耐性菌を増やすことに

3.外出から帰宅時、調理時、食事前は手を洗う
手洗いは感染対策の基本です

4.咳エチケット
咳やくしゃみが出る時はマスクを正しくつけましょう

5.罹患したら会社や学校を休み感染を広げない
発症した後5日を経過し、かつ、解熱後2日を経過するまでは他の人にうつして流行を広げる可能性があるので、学校保健安全法では出席停止になります。


―お話しを伺った先生―
藤友結実子(ふじとも ゆみこ)先生
国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
主任研究員
京都大学法学部卒業、滋賀医科大学卒業、大津市民病院 初期研修医、呼吸器科専攻医、京都府立医科大学感染制御・検査医学、大阪医療センター感染症内科、京都府立医科大学感染制御・検査医学、2017年 現職
【専門分野】臨床感染症、感染対策 【資格】呼吸器専門医、総合内科専門医

画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/202317/LL_img_202317_8.jpg
藤友結実子先生


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