新大和漢方株式会社(本社:奈良県 社長:山口夏美)は、長年に渡り、生薬や漢方の考えをベースに医薬品 や、化粧品、健康食品の研究開発に取り組んでまいりました。この度、合同会社臨床科学研究所 後藤純平氏、近畿大学産業理工学部 山﨑瑞奈子氏 大貫宏一郎氏, 九州大学農学研究院 清水邦義氏と 共同研究を実施。化粧品とマッサージを併用することで,関節痛(肩,腰,膝)の緩和効果および膝関節可動域の拡大に有用な効果があることが示唆されました。本研究は、「診療と新薬 2021 vol.58 no.6」(6月28日発売)で発表されました。
研究の背景
我が国の慢性疼痛(3ヶ月以上持続する痛み)保有者は2315万人,成人の22.5%と推定され,国民の約5人に1人が「腰痛」「肩こり」「手足の関節の痛み」などの慢性疼痛を有することになります。しかし、医療機関で治療を受けているものは少なく、その理由として、痛みを我慢することを“美徳”とする日本特有の風潮と、一般的な整形外科が、疼痛性疾患に対し有効な手段を持ちあわせないことも懸念されています。そこで当社は、化粧品とセルフマッサージを併用し,関節痛(肩,腰,膝)の緩和効果の検証を試みました。また,本試験の介入に伴う膝関節の可動性を客観的指標として検証いたしました。
結果の概要
1.試験品先行群(AB群)およびプラセボ先行群(BA群)ともに,質問紙検査において各関節の痛みの有意な低下または低下傾向が認められました。
2.膝関節可動域測定においても有意な拡大または拡大傾向が認められました。
研究結果
1 試験品とマッサージの併用による関節痛(肩,腰,膝)の緩和効果
被験者15名をランダムに2群に割り付け,クロスオーバー法における第一試験期,第二試験期のそれぞれにおいて,試験品またはプラセボの塗布とマッサージの併用を行いました。各試験期における塗布前,塗布10分後に質問紙検査(NRS,FRS,VRS,VAS)を実施。試験品先行群およびプラセボ先行群ともに,各関節の痛みの有意な低下または低下傾向が認められました。
1.1 NRSでは「肩の痛み」「腰の痛み」「膝の痛み」について評価しました。I期の前後比較では,AB群で「膝の痛み」の低下傾向(p=0.059)(Figure 4),BA群で「肩の痛み」の低下傾向(p=0.059)がみられました。II期の前後比較では両群ともに有意な変動はみられませんでした。
1.2 FRSでは「膝の痛みのつらさ」について評価しました。I期の前後比較では,AB群に低下傾向(p=0.059)(Figure 5)がみられました。BA群に有意な変動はみられませんでした。II期の前後比較では,両群ともに有意な変動はみられませんでした。
1.3 VASでは「肩の痛み」「肩を回した時の痛み」「腰の痛み」「立ち上がった時の腰の痛み」「膝の痛み 」「膝の曲げ伸ばしの痛み」について評価しました。VASにおける「膝の曲げ伸ばしの痛み」では,試験品の塗布によりI期で低下傾向,II期で有意な低下を認めました(Figure1)。また,「肩の痛み」の前後比較では,試験品の塗布によりI期でスコアの有意な低下,II期で低下傾向が認められました(Figure2)。 VASで「肩の痛み」を含む全ての項目で,肩・腰・膝の痛みを緩和する傾向が示唆される結果となりました。
2 試験品とマッサージの併用による膝関節可動域の有意な拡大または拡大傾向の確認
膝関節可動域の結果では,I期の前後比較において,試験品を塗布した際の左膝の可動域が有意に拡大しました。さらにII期においても試験品を塗布した際に,左右の膝の可動域が拡大傾向を示しました。II期では低下傾向にとどまりI期のみ統計学的有意な拡大が示されたと考えられます(Figure3)。
Figure1
Figure2
Figure3
Figure 4
Figure 5